「苦しい、助けて…」年金15万円・77歳母の喘ぎ声。朝4時、虫の知らせで飛び起き、駆け付けた息子が実家で味わった「不意打ちの別れ」【FPが解説】
高齢者の一人暮らしの現状とリスク
少子高齢化や核家族化が進む中、高齢者の「一人暮らし」は一般的なライフスタイルとなっています。しかし、住み慣れた自宅での自由な暮らしには、急な体調不良や転倒の際に助けを呼べないリスクも伴っています。離れて暮らす親が元気なうちに、家族はどのような備えをしておくべきでしょうか。川淵ゆかり氏の相談事例から、高齢親の見守りサービスについて学びましょう。
母との突然の別れ…深夜の留守番電話に残された声
Aさん(50歳)は、妻と大学受験・高校受験を控える二人の子どもとともに暮らしています。Aさんの母親は、車で70分程度離れた場所の戸建て住宅に一人で住んでいました。月15万円程度の年金暮らしです。5年前に父親が亡くなった際、Aさんは同居を勧めましたが、「父親やあなたとの思い出が詰まったこの家に、一人でも住み続けたい」という母親の希望を尊重しました。母親の高血圧は気にかかっていたものの、普段から健康的で元気だったため、本人の好きなようにさせておいたのです。
当時、Aさんは仕事が忙しい時期でしたし、大学受験と高校受験を控える二人の子どもも抱えていましたが、週1回の電話は欠かさず、できる範囲で母親を気にかけていました。
ある日、明け方の4時ごろにAさんはトイレで目が覚め、ベッドに戻って何気なくスマホをみたときのことです。真夜中に、母親からの着信履歴が残っていることに気が付きました。慌てて留守番電話を再生すると、「……、苦しい。助けて……」という、喘ぐような声が残されていたのです。
すぐに折り返し電話をしましたが、電話には出ません。不安になったAさんは、急いで実家へと車を飛ばします。玄関で母親を呼んでも返事がありません。寝ているだけと信じたかったのですが、受話器の横で倒れている母親を発見。すぐに救急搬送したものの、病院に運ばれてまもなく亡くなってしまいました。
母親が好きだったAさんは、あまりのあっけなさに一時は茫然自失となりましたが、受験を控えた子どもたちの前では気丈に振る舞うことで精一杯でした。「もっとなにかできたのではないか」という深い後悔は、いまも消えることはありません。
増える「高齢者の一人暮らし」の実態
少子化や核家族化、高齢化などが相まって、一人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。以前は、地域の近所付き合いなども活発に行われていましたが、最近ではこうしたつながりや、家族関係ですら希薄なケースが増えており、孤独死の数も増加傾向にあるのが現状です。
内閣府の令和6年の高齢社会白書をみると、65歳以上の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあることがわかります。昭和55年には、65歳以上の人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%にまで拡大しました。24年後の令和32年には男性26.1%、女性29.3%となると見込まれています。
また、令和7年の高齢社会白書のデータでは、一人暮らしの高齢者数は令和2年には男性約231万人、女性約441万人となっており、令和22年には男性約356万人、女性約540万人までと20年で急増することも予測されています。世帯数としては、65歳以上のいる世帯のうちの半数以上を、夫婦での二人暮らし(8,635世帯)か一人暮らし(8,553世帯)が占めているようです。
離れて暮らす親を守る、官民の「見守りサービス」
Aさんのように、離れて暮らす親御さんがいる家庭では、万が一の事態を防ぐためにも、行政や民間企業が提供する見守りサービスを利用するのがいいでしょう。近年は物価高や人手不足の影響で、高齢者施設の入居費用も上昇傾向にあり、自宅での生活を希望する高齢者はさらに増えると予想されます。親が元気なうちから、「どこでどう暮らすか」を話し合い、老後の資金計画とともに見守りの仕組みを整えておくことが欠かせません。
一人暮らしの高齢者の見守りサービスには、行政や民間企業が提供するさまざまな種類があります。これらのサービスは、安否確認や緊急時の対応、孤独感の軽減にも役立ちます。見守りサービスを選ぶ際は、高齢者本人が嫌がるケースもあるため、本人の意向を尊重し、早いうちに、どんな見守りが必要か話し合っておくことが大切です。主なサービスは、以下の4つの種類にわけられます。
- 訪問型見守り
- 民生委員やヘルパーが定期的に訪問
- 郵便局員や地域のボランティアが安否確認
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配食サービスを利用する際に、配達員が安否確認
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センサー・カメラ型見守り
- 自宅に設置したセンサーで動きを監視
- 一定時間動きがない場合に通知
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カメラで様子を確認できるサービス
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アプリ型見守り
- スマートフォンの無充電状態やメッセージへの返答で安否確認
- 利用履歴の通知機能
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家族の位置情報の共有アプリ
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駆けつけサービス付き見守り
- ホームセキュリティ会社が異常時に現場へ急行
- 24時間365日体制で対応
サービスによって差があるなか、利用料金は月額数百円から始められるものから、初期費用が大きかったり、月額料金が数千円かかったりするものまでさまざまです。高齢者の一人暮らしはいつまで続くかは予測ができないことなので、無理のない範囲で選ぶようにしましょう。
高齢化が進む日本…国をあげて公的サービスが整いつつある
現在、国や自治体は、高齢者が重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるように、医療、介護、住まい、予防、生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。このシステムは、「自助」「互助」「共助」「公助」の4つの助け合いで支えられており、かかりつけ医や地域の連携病院、訪問診療のほか、訪問介護、通所介護、施設サービスなどが連携しています。配食サービス、買い物支援といった生活支援のサポートも対象です。
その拠点となるのが「地域包括支援センター」。介護保険法に基づき、すべての市町村に設置されている公的な相談窓口であり、全国に設置されています。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置されていて、総合相談支援をはじめ、地域全体のケアマネジメント支援といった役割を担っており、65歳以上の高齢者やその家族、高齢者支援に関わる人まで幅広く利用可能となっていますし、相談は無料なのでまずは相談してみましょう。
地域全体で見守るネットワークの活用
さらに、多くの市町村では「見守り支援ネットワーク事業」を実施しています。これは、民生委員や地域のボランティア、協力事業所(商店、事務所、医療機関など)、郵便局員や電気・ガス・水道の検針員、新聞配達員、宅配業者、ゴミ収集員などが日常業務のなかで高齢者の異変に気づいた際に、関係機関へ連絡する仕組み。いまは多くの自治体で導入されていますので、まずは相談してみてください。
今後、高齢者の一人暮らしはますます当たり前の社会となっていきます。親御さんが住み慣れた家で安全かつ快適に過ごせるよう、いざというときに利用できるサービスや公的な相談窓口を、いまのうちから調べて備えておきましょう。
